連載中の「クリーニング流通新聞」4月号の原稿より
2023.03.28
業界紙である「クリーニング流通新聞」への連載投稿記事も4年を過ぎて、もう来月は52回目の連載です。
編集長に請われて水洗い技術や染み抜き技術等の紹介や、後継者問題等の思ったところを小さな個人店の視点から投稿を続けています。
結構反響もあって楽しみにしていてくださる同業者の方も多いようです。
来月の4月号の原稿を昨日書き上げたところなので、前半部分を公開してみます。ドライクリーニングのきれいにならない問題点を、どのように同業者に訴え提言しているかを知って頂けたら嬉しいです。
記憶にまだ新しい出来事ですが、九州老舗温泉旅館のレジオネラ属菌3700倍騒動でマスコミに散々叩かれて、ついに矢面に立っていた前社長が亡くなられました。まさに悲劇です。実は私は温泉旅館の風呂のお湯や銭湯のお湯がろ過されながら循環していることを知ったのはそんなに昔の事ではありませんでした。温泉や銭湯のお湯はきれいでかけ流しのはずと信じていたのです。
100%源泉かけ流し温泉の紹介本を読んで実態を知ってからは、旅先では余程のことがない限り温泉には入りませんでした。大勢の人の入る風呂は決して衛生的ではないと知ってしまったからです。
今回の報道でまず直感的に感じたのは、じゃあドライクリーニングはどうなんだ、ということです。風呂と同じようにフィルターで循環して汚れをろ過して溶剤を再使用しているわけです。風呂と違って溶剤管理に法的規制は皆無で、汚れていようが臭いがあろうが保健所は立ち入り検査は勿論何も言いません。公衆浴場のお湯が汚れていたり臭えばたちまちお客さんから保健所に通報されます。当然です。
日本にドライクリーニングが導入されて以来百数十年が経つというのに、汗汚れが落ちないというドライクリーニングの最大の欠点は未だに解消されていません。結局は水洗いが一番きれいになるということは業者なら皆知っていることだし、そろそろ自分たちで何とかした方が良いのではないでしょうか。
何でもかんでもドライで洗って機械でパートさんが仕上げて一丁上がり。どうせお客にはわかりゃしない。でもって、現金欲しさに(魚の居る)最盛期になりふり構わず半額セール(投網)を打つわけです。
客層の違う私の店には関係のないことですが、そしてこういうご時世で資金繰りが苦しいこともお察しするのですが、金になるなら何でもするという姿勢は同業者としていただけません。
ウールの背広が水で洗えてシミもきれいに抜けてのセールならば低コスト達成経営は実に御見事で脱帽です。現実はドライオンリーの欠陥クリーニングでお客をだましていると私は感じています。実はきれいになっていないじゃないですか。クリーニング業者としての誇りというものはないのか。
こんな拝金主義の貧しい考えの経営では、まともで優秀な子供なら後を継ぎません。私たちは衣類の医者であってそれは他業界に比べて誇りのはずです。人の命を預かる医者が手術料今週限り半額などと広告しますか?恥を知って早々に業界から退場願いたい。
最後はきつい言葉になってしまいましたが、今までにもこういった意見は新聞紙上で書いてきたのですが、同業者からの反対意見は全く聞いたことがありません。
要するに耳に痛いのです。
水洗いが一番きれいになるのですが、ドライクリーニングでないと洗えない衣類が結構あるのも事実です。
100%完璧は出来ないけれど、よりきれいで衛生的なドライクリーニングの研究ももう30年も続けてきました。
高価なのですがある特定の洗剤を使用し、洗い方を工夫徹底すれば私的には満足のいく洗い方ができますし、当店では実際にその洗い方を過去30年も続けています。(残念な事にこの洗剤を使用しているクリーニング店は飯田下伊那には当店以外に有りません。全国でも少数です)
そのあたりの正直な話は次回以降に書きます。
下の写真はクリーニング流通新聞3月号の私の投稿記事です。画像をクリックしますと拡大します。