九州の温泉旅館の風呂とドライクリーニングの共通性
2023.03.23
先日、九州の老舗温泉旅館で、湯船のお湯を一週間に一度替えなくてはいけないのに、年に2回しか替えてなかったと問題になりました。
マスコミに散々叩かれて、気の毒なことに70歳の社長さんが自殺されました。まさに悲劇です。
銭湯では湯船のお湯を毎日入れ替えると水道代が大変なので、フィルターでお湯を循環させて汚れを濾過して再使用しているのです。お湯が減ってきて足りなくなった分は新らしいお湯を足していきます。
ろ過だけではバイ菌が繁殖してしまうし、第一不衛生なので定期的に全部のお湯を入れ替えるように法律で決まっているのです。一番衛生的で安心なのは100%掛け流しで循環ろ過をする必要のない天然温泉です。
実はドライクリーニングも銭湯と同じで、洗濯液を捨てずにタンクに貯めておいてフィルターで循環させて何度でも再使用して洗っています。(下の図を参考にしてください)
だんだん液が減ってくると新しい液を追加していきます。た、だ、し、液が汚れたからと言って全部の液を入れ替えるなんてことは法律で決まっていないし一切しません。(法律の盲点です)
お風呂のお湯の色が汚れていれば誰にも判りますし、不衛生だと言って入浴客に保健所に通報されてしまいます。
ドライクリーニングの場合は仮に同じ液で何度も洗って液が汚れて悪臭が出ていても、お客様には工場の中は見えないし法律違反でもないのです。
ドライクリーニングというのは大勢のお客様の衣類を同時に洗います。ですからいろんなお客様の汚れが混ざるわけです。そして洗いに使った汚れた液をタンクに貯めてろ過して濯ぎ等に再使用しているわけです。
はっきり書きますが銭湯に比べて実に不衛生です。知らないのはお客様だけです。
廃業された同業者やクリーニング店で働いた経験のあるお客様が当店を多く利用してくださるのには理由があるのです。
私が永年よりきれいになるドライクリーニング方法と水洗いの研究をし、お客様に最終的に水洗いをお勧めしてきたのは同じくこういった理由があるのです。水洗いは一点一点手洗いをして、さらに水でジャバジャバ濯ぐので実にそして最高に衛生的なのです。家族の物だけを水で洗う家庭洗濯が一番きれいで衛生的なのですよ。
ではなぜクリーニング店では水洗いをしてくれないのかと言いますと、手間が掛かって面倒で高料金になってしまうからなのです。そしてお客様がドライクリーニングの事を知らないので、業者任せにして「水で洗ってください」と言えないからなのです。
さらに難しいウールの背広等の水洗いとなると、水洗い技術を持ったクリーニング店は全国でも稀なのです。
飯田下伊那地区でウールの背広を清潔に水で洗えるのは「クリーニング工房木下」だけです。
ウールの背広の水洗いは医者の外科手術に似ています。最新の技術と経験が必要で、とてもバーゲンセールなどやろうという発想が出てきません。医者が今週は手術代金半額とかセールをやりますか?
低料金のセール広告を出すクリーニング店は、水洗い技術のないドライクリーニング専門店で避けた方が賢明です。
お金を払って他人の汚れが付いてくるクリーニングなど安くても私ならまっぴら御免です。
「ドライクリーニングに出すならこの洗剤使用の店へ」、「ドライクリーニングでは汗汚れは落ちません」といった話は次回以降書いていきます。
クリーニング師は衣類の医者です。私は永年研鑽してきた自分の職人技術に誇りを持っています。
そして本当のことをお客様に知って頂いて、クリーニングという仕事がよりきれいに清潔に洗えて信頼される業に変わっていってほしいと願っています。
続きます。